翻訳家は儲かるのか?

翻訳は今ではインターネットとパソコンがあれば個人でも気軽にできるようになり、副業の中でも代表的なものの一つです。英語に自信のある人なら一度はやってみようと考えたことがあるのではないでしょうか。では実際に翻訳の仕事をやってみてどれくらい稼ぐことができるものなのでしょうか?今回は翻訳がビジネスとして儲かるかどうかを考えていきます。

翻訳の単価

まず翻訳の報酬は1ワードあたり何円という形で計算されます。例えばフリーランスの相場の下あたりなら英文和訳で1ワードあたり10円となります。和文英訳なら翻訳家は1日で2000ワードほど翻訳できるので、日給で2万円という計算になります。

日雇い労働の日給が1万円であることを考えると、まあ悪くはないかなという金額ですね。土日に仕事を受ければ月8万円の収入が得られるので、副業としてはなかなか美味しいはずです。しかしそこまで甘くがないのがこの翻訳業界の実情で、今は単価がどんどん下がってきています。

翻訳の単価は下がっている

今はネットを使えば知らない単語や表現も簡単に見つけられるので、翻訳の敷居は低くなっていると言えます。簡単な翻訳ならそれなりに英語力があれば誰でもできるので、小遣い稼ぎに学生や主婦も翻訳に参加するようになりました。ただ彼らにはコネがないので、十分な仕事を得ることができません。そこで翻訳業にもクラウドソーシングが取り入れられることになりました。

クラウドソーシングとは不特定多数の人達に仕事を外注する仕組みのことです。クラウドは雲ではなく群衆(crowd)の方ですね。大規模な作業を細切れにして不特定多数に振り分けることで、質の保証はできないものの以前と比べて圧倒的に安価に仕事を発注できるようになりました。

通常なら1万ワードの大きめの案件は10万円くらい取らないと割に合いませんが、細切にして100ワード50円にすると、割に合わなくても暇な人が小遣い稼ぎに引き受けてしまうのです。結果として専門性の低い案件にはクラウドソーシングで発注されており、安い報酬でも引き受ける人が数多くいるので、価格破壊も進んでいます。

例えばconyacという翻訳サイトの場合だと、素人でも受注できるlight翻訳の単価は1ワードでたったの0.6円、日給換算だと1,200円となります。私も登録して少しだけ受注していましたが、馬鹿らしくなって1日でやめました。Conyacは報酬は最悪ですが、サイトのデザインもすっきりしていて、システム周りも使いやすいです。報酬がまともになれば、暇つぶしに復帰するかもしれません。

他の代表的な翻訳サービスとしてはGengoが挙げられます。Gengoは仕事を受注するために英語力を測る試験に合格する必要があり、翻訳者の質がある程度保障されています。

そんなGengoでもスタンダードクラスで報酬はワードあたり3円です。日給換算でも6000円です。世界でもトップレベルの翻訳サイトでもこの程度の報酬なのです。残念ながら翻訳業は儲からないと結論を出すしかありませんね。

クラウドが既存の翻訳会社を喰う

翻訳のクラウドソーシングで影響を受けるのは翻訳家だけではありません。翻訳会社も料金のダンピングによって被害を被っています。例えば翻訳サービスの料金はGengoで1ワード5円、Conyacは1ワード1.5円なので、1ワード最低30円の日本の翻訳会社が勝てるわけがありません。

クラウドソーシングは事業者にとって実に便利な代物です。給料は仕事がある時にだけ支払えばいいですし、外注なので社会保障に加入させる必要もありません。労働力として大人数の翻訳家を雇うことになりますが、雇用コストが最小限に抑えられるのです。

クラウドソーシングをうまく活用すれば既存の翻訳会社から仕事を奪うことも十分に可能です。お金儲けが難しい今の世の中では、翻訳料金は少しでも低い方が良いに決まっています。もうクラウドソーシングの時代が来ていると言えますね。

出版翻訳

今までの話は実務翻訳に関するものです。翻訳にはもう一つのジャンル「出版翻訳」というものがあります。出版翻訳で印税契約を結ぶと、本の売上に応じて印税が得られます。本の売上が増えるほど印税も上がるため、一攫千金を狙えるイメージですが、実際は儲かるのでしょうか?

結論から言うと残念ながら出版翻訳で儲けることは難しいようです。今は出版業界が落ち目なので、本全体が売れなくなってきています。本が売れない以上入ってくる印税も少なくなります。出版翻訳は今では旨みのないビジネスになってしまいました。

機械翻訳について

また最近では機械による翻訳も精度が上がってきています。特にGoogle翻訳は翻訳の精度がずば抜けて高く、そこそこなレベルの翻訳が一瞬でできてしまいます。産業翻訳・ビジネス翻訳などのある程度型が決まっている翻訳なら、かなり完成度の高い翻訳を作ってくれます。私も機械翻訳に関しては半信半疑だったのですが、実際に使ってみると、翻訳の意味もきちんと通っています。中には日本語の微妙なニュアンスによりうまく訳せていない部分もありますが、そこは自分で手直しすればいいだけです。これにより翻訳の負担が半分以上軽減されました。

ここまで機械翻訳の完成度が高いと、相当レベルの高い翻訳者でない限り、翻訳家の仕事は奪われるのではないかと思いました。おそらく翻訳家の将来は明るくないでしょう。誰でも無料でそれなりなレベルの翻訳ができるようになるなら、わざわざ翻訳家にお金を払って仕事をしてもらう必要も無くなります。Googleの機械翻訳は翻訳業界に極めて大きな影響を与えることになるはずです。

翻訳家・翻訳会社の対応

では既存の翻訳家達はこの現状にどう対抗するべきなのでしょうか。一番現実的なのは機械翻訳を活用して自分の生産性を高めることでしょう。実際に業務に機械翻訳を用いている会社は少しずつ増えています。そしてフリーランスの翻訳家には機械翻訳した文章を校正する仕事を回しています。翻訳よりも校正の方が仕事の単価は低いはずです。翻訳会社としても機械翻訳はタダでGoogleにやらせて、校正だけ翻訳家にさせた方が外注費も安く済むでしょう。

これによりもっとも被害を受けるのは、既存のやり方にこだわる翻訳家です。「機械翻訳なんて当てにならない!」と毛嫌いしていると、機械翻訳を使う翻訳家に生産性の面で大きく遅れをとります。翻訳の単価はこれからもどんどん下がっていくことが予想されるので、翻訳スピードを大きく上げないとまともにお金を稼げなくなります。

その一方でこれから稼げるようになるのは、専門知識を持った翻訳家でしょう。機械翻訳は確かに便利ですが、内容の正確さを担保してくれる訳ではありません。特に日本語と英語は言語としての性質が大きく異なるので、機械翻訳でもミスがたまに発生します。機械翻訳によるミスを発見し、それをうまく訂正できる翻訳家はこれからニーズがあります。これからは翻訳家という職業が廃れて、「校正家」のような新しい職業が生まれるかもしれません。

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